神田須田町界隈の老舗料理店の軒行燈
明治・大正の面影を残す
神田須田町界隈の老舗料理店の軒行燈(神田須田町界隈)
明治から大正にかけて、神田須田町界隈は、日本橋・銀座と並んで東京で最もにぎやかな街の一つでした。その名残は、老舗料理店の軒先に吊り下げられた小粋な軒行燈に見ることができます。
(1)蕎麦屋「神田まつや」 1884年(明治17年)創業
二階のひさしに吊り下げられたふたつの大きな提灯、そして方形の屋根の軒行燈が特長です。昔は酒を飲むというと蕎麦屋へ行ったそうですが、「鬼平犯科帳」や「仕掛け人・藤枝梅安」などの作品で知られる池波正太郎もよく訪れたお店として知られています。
(2)あんこう鍋「いせ源」 1830年(天保元年)創業
都内では一軒しかないあんこう鍋の専門店です。緑青の吹いた切妻の軒行燈には「阿ん古う鍋 以せ源」と変体仮名で大書してあります。
(3)甘味処「竹むら」 1930年(昭和5年)創業
軒行燈は円い木の屋根、底には四つの脚が付き、「竹邑 志る古」と墨書してあります。揚まんじゅうのおいしいお店です。
(4)鳥すきやき鍋「ぼたん」 1897年(明治30年)頃創業
「鳥」一文字が入った暖簾のさがる玄関は老舗料理店の雰囲気を醸し出しています。方形の軒行燈には「ぼ多ん」の変体仮名。この店の鳥すき鍋は炭火を使うので、座敷は畳ではなく籐が敷き詰めてあります。
(5)神田藪蕎麦 1880年(明治13年)創業
明治以来の伝統の味を伝える老舗で、今も多くの人に愛されています。2013年に起きた火事により東京都選定歴史的建造物であった建物は焼失してしまいましたが、2014年鉄骨鉄筋コンクリート造りで再建されました。焼け残った方形の軒行燈には「や婦”そば」の文字、玄関には隷書で「藪蕎麦」とあります。
更新日:2022年10月03日